法人で内部情報漏洩の疑いが出たら何を確認する?不審な操作の見分け方とその後の対応
社内で重要なファイルが不自然に見られていたり、大量のデータが保存されていたりすると、内部情報が漏洩しているのではないかと不安になるでしょう。
ただし、こうした動きがあっても、すぐに従業員の不正だと決めつけることはできません。
法人で内部情報漏洩の疑いがあるときは、まず記録を残し、アクセス履歴やパソコン、メールなどを確認しながら状況を整理することが大切です。
この記事では、情報漏洩を疑う主な兆候や最初に行う対応、具体的な調べ方、漏洩が分かった後の対応を分かりやすく紹介します。
何から確認すればよいのか分からない場合は、自社の状況と照らし合わせながら読み進めてください。
内部情報漏洩を疑う主な兆候
不自然なファイル閲覧
普段の担当業務では扱わない資料や、業務との関係が薄い情報へのアクセスが繰り返されている場合は、操作の目的を確認する必要があります。
顧客情報や技術資料、契約情報などは、正規のアカウントから閲覧されているだけでは不正とは判断できません。
一方、深夜や休日に重要なファイルへアクセスする、短時間に複数部署の資料を開くといった行動が重なる場合は注意が必要です。
確認するときは、アクセス日時や対象ファイル、使用したアカウント、担当業務との関係を照らし合わせましょう。
担当変更や引き継ぎによって閲覧量が増えるケースもあるため、操作記録だけで情報漏洩と決めつけず、通常業務との違いを客観的に見極めることが大切です。
大量のデータ保存
短期間に多数の資料を保存したり、通常より大きな容量のデータをダウンロードしたりしている場合は、その理由を確かめたほうがよいでしょう。
バックアップや資料整理など、業務上の事情で保存量が増えることもあるため、データ量だけで内部不正とは判断できません。
特に注意したいのは、大量保存に加えて、深夜の操作や重要情報への集中したアクセス、個人用クラウドへの同期などが見られるケースです。
USBメモリなどの外部記録媒体へ多数のファイルをコピーしている場合も、持ち出しの承認状況や社内ルールを確認する必要があります。
保存先や操作日時、対象となったファイルまで確認すると、通常業務の範囲なのか、追加調査が必要なのかを判断しやすくなります。
退職前の情報持ち出し
退職や転職が決まった後に、これまで扱っていなかった資料へのアクセスや大量のデータ取得が増えた場合は、慎重に状況を確認します。
引き継ぎや業務整理によってファイル操作が増えることもあるため、退職予定というだけで本人を疑うのは適切ではありません。
ただし、顧客情報や取引先一覧、技術資料などを業務上必要な範囲を超えて取得し、USBメモリや個人用クラウドへ移している形跡があれば注意が必要です。
退職の意思を示した時期を境に、アクセス先やダウンロード量が変化していないかを時系列で確認すると、状況を整理しやすくなります。
漏洩の有無は憶測で判断せず、アクセスログや端末の利用履歴など客観的な記録を保全したうえで確認を進めることが重要です。
内部情報漏洩を疑ったときの初動対応
関係データを保全する
疑わしい動きを見つけても、すぐに端末を初期化したり、ファイルやログを削除したりするのは避けましょう。
原因を調べるうえでは、アクセスログやメールの記録、端末の利用履歴など、発生時の状況を確認できるデータが重要になります。
IPAも、事実関係の調査や訴訟などを見据え、情報や証拠を適切に保全することをインシデント対応の一つに挙げています。
対象となる端末やログには必要以上の操作を加えず、いつ、誰が、どのデータを保全したのかも記録しておくと、その後の調査を進めやすくなります。
自社だけで適切な保全が難しい場合は、重要な記録を失う前に、デジタルフォレンジックなどを扱う専門家への相談も検討するとよいでしょう。
不審なアカウントを確認する
次に確かめたいのが、問題となった操作に使用された社内アカウントと、その利用状況です。
本人のアカウントによる操作に見えても、パスワードの漏洩や共有アカウントの使用など、別の要因が関係している可能性もあります。
ログイン日時や接続元、利用端末、アクセスしたシステムを確認し、通常の勤務状況と一致しているかを整理していきます。
ただし、調査対象は会社が管理するシステムやアカウントを基本とし、本人の私物端末や個人アカウントへ無断でアクセスすることは避けるべきです。
最初から特定の従業員による行為と決めつけず、記録を基に「どのアカウントで何が行われたか」を切り分けることが大切です。
アクセスを制限する
情報の持ち出しが続いているおそれがある場合は、被害の拡大を防ぐために必要な範囲でアクセスを制限します。
例えば、重要ファイルの閲覧権限を外す、外部記録媒体の利用を止める、対象アカウントを一時的に停止するといった方法が考えられます。
一方で、慌てて設定を大きく変更すると、業務への影響が広がったり、調査に必要な記録の把握が難しくなったりする場合があります。
IPAも、インシデント発生時には証拠保全などの初動対応をあらかじめ定め、被害を抑える体制を整える重要性を示しています。
証拠の保全と被害拡大の防止を両立できるよう、対象となる情報や権限を整理したうえで、必要な措置から進めましょう。
社内共有を限定する
事実関係が明らかになる前に情報を広く共有すると、調査対象者に対応を察知されたり、根拠のない憶測が社内に広がったりするおそれがあります。
初動段階では、経営層や情報システム担当者、法務担当者など、対応に必要な関係者に共有範囲を絞ることが重要です。
共有する内容も「誰が漏洩したか」といった推測ではなく、確認された操作や日時、対象データなど客観的な事実を中心に整理します。
IPAでは、インシデント発生時に備えて関係部門への周知を含む初動対応や、組織内の役割・体制を事前に整備することが示されています。
必要以上に情報を広げず、対応する担当者と共有経路を明確にしておくことで、調査の混乱を抑えながら次の対応へ進みやすくなります。
内部情報漏洩を調べる方法
アクセス履歴を調べる
まず確認したいのは、重要な情報に対して「誰が、いつ、どのような操作をしたのか」が分かる記録です。
アクセスログを時系列で整理すると、通常業務では見られない時間帯の操作や、大量の情報取得といった変化を把握しやすくなります。
IPAも内部不正対策としてログの記録や確認を挙げており、重要情報へのアクセス状況を把握できる仕組みを整えることが重要です。
ファイル閲覧履歴
顧客情報や営業資料など、漏洩が疑われるファイルについて、閲覧したアカウントや日時を確認します。
見るべきなのはアクセスの有無だけではなく、その従業員の担当業務や勤務時間と照らして不自然な点がないかです。
例えば、担当外の資料を深夜に繰り返し閲覧している場合や、退職前になって重要情報へのアクセスが増えている場合は、詳しく確認する必要があります。
一方、引き継ぎや応援業務など正当な理由があるケースも考えられるため、閲覧履歴だけで不正と決めつけてはいけません。
利用しているファイルサーバーやクラウドサービスによって取得できるログは異なるので、自社で残っている記録の種類と保存期間も確認しておきましょう。
記録が見つかった場合は不用意に編集せず、後から経緯を検証できる状態で保全することが大切です。
ダウンロード履歴
閲覧だけでなく、重要なファイルが端末へ保存された形跡も調査対象になります。
短期間に大量のファイルを取得していないか、普段扱わないデータまでまとめてダウンロードしていないかを時系列で確認します。
特に、退職前や担当変更の直前などに取得量が急増している場合は、業務上の必要性があったかを確かめることが重要です。
ただし、大量のダウンロードがバックアップや引き継ぎによるものなら、直ちに情報の持ち出しを意味するわけではありません。
ファイル名や容量、操作日時、利用アカウントなど、自社のシステムで取得できる記録を組み合わせて判断しましょう。
IPAも、ログの収集・解析を内部不正の抑止や把握に活用する考え方を示しています。
パソコンの利用履歴を調べる
社内システムの記録だけでは分からない場合、業務用パソコンに残された情報が手掛かりになることがあります。
外部記録媒体の利用状況やファイルの保存状態などを確認すると、社外への持ち出しにつながる操作がなかったかを調べられます。
ただし、不用意に端末を操作すると記録が更新されるおそれがあるため、重要な事案では専門家による証拠保全も検討すべきです。
USB接続履歴
USBメモリなどの外部記録媒体が使われていないか、確認できる範囲で端末やセキュリティシステムの記録を調べます。
IPAの調査でも、内部から情報を持ち出す手段としてUSBメモリが利用されたケースが確認されており、外部記録媒体の管理は重要な対策の一つです。
疑わしい日時の前後にUSB機器が接続されていれば、その時間帯に行われたファイル操作やアクセス履歴と照らし合わせます。
ただし、接続記録があっただけでは情報をコピーした証拠にはならず、業務上認められた機器を使用している可能性もあります。
使用された機器や日時、対象となったデータを一つずつ整理し、複数の記録から事実関係を確認することが必要です。
ファイルコピー履歴
業務用パソコンから別の場所へファイルが移された形跡がないかも確認します。
ただし、一般的なパソコンにはすべてのファイルコピーを完全に記録する仕組みが標準で残っているとは限らないため、「コピー履歴」という一つの記録だけを探す方法では十分ではありません。
端末や導入しているセキュリティ製品で取得できるログ、USBの接続状況、クラウドサービスの操作記録などを組み合わせて調べます。
ファイルの更新日時なども手掛かりになることがありますが、操作によって変化する情報もあるため、それだけを根拠に判断するのは避けましょう。
漏洩した可能性のある情報と持ち出し経路を結び付けるには、複数の記録を時系列で整理することが欠かせません。
メール送信履歴を確認する
社外への情報送信が疑われる場合は、会社が管理するメールシステムで確認できる送信記録を調べます。
不審な宛先への送信が増えていないか、疑わしい時間帯に外部への送信が行われていないかなどを、業務内容と照らし合わせましょう。
添付ファイルなどの詳細をどこまで確認できるかは、利用しているメールサービスやログの設定によって異なります。
個人のメールアカウントへ無断でログインするのではなく、自社が管理・取得できる記録の範囲で調査を進めることが基本です。
メールだけで結論を出さず、ファイルへのアクセスや端末の利用状況と時系列でつなげると、情報がどのように扱われたのかを把握しやすくなります。
関係者に事情を確認する
記録をある程度整理した段階で、必要に応じて関係者から業務状況や操作の理由を確認します。
最初から不正を前提に問い詰めるのではなく、「この時間帯に大量の資料を取得した理由は何か」など、確認できた事実を基に質問することが重要です。
担当者や上司への確認によって、引き継ぎや顧客対応など正当な業務だったと判明することもあります。
反対に、説明とアクセスログなどの客観的な記録に食い違いがあれば、追加調査が必要かどうかを判断する材料になります。
重大な漏洩が疑われ、懲戒処分や法的措置につながる可能性がある場合は、就業規則や社内手続きを確認し、弁護士や調査・フォレンジックの専門家への相談も検討しましょう。
内部情報漏洩が判明した後の対応
漏洩情報の重要度を確認する
事実が確認できたら、まず「何が、どこまで外部に渡ったのか」を整理し、被害の大きさを把握します。
顧客情報や従業員の個人情報、営業秘密、取引先の資料など、情報の種類によって企業が負うリスクや必要な対応は変わります。
対象となる人数やデータ量だけでなく、第三者への提供や公開の有無、現在も閲覧できる状態なのかといった点も確認しましょう。
パスワードや決済に関する情報などが含まれる場合は、悪用による二次被害にも目を向ける必要があります。
情報の種類、範囲、持ち出し先、発生時期を時系列で整理しておくと、行政への報告や本人への通知、法的措置など、その後の対応を判断しやすくなります。
個人情報保護委員会への報告要否を確認する
漏洩した情報に個人データが含まれる場合は、個人情報保護委員会への報告が必要な事案に当たるかを速やかに確認します。
民間事業者では、要配慮個人情報を含む場合、財産的被害のおそれがある場合、不正な目的による行為が疑われる場合、または1,000人を超える漏洩などが報告対象です。
従業員が顧客の個人データを不正に持ち出して第三者へ提供したケースも、個人情報保護委員会が報告対象の例として示しています。
報告対象に該当する場合は、発覚後速やかに速報を行い、原則30日以内、不正な目的で行われたおそれがある場合は60日以内に確報を行う仕組みです。
本人への通知が必要になる場合もあるため、「社内で処理すれば終わり」と考えず、該当要件と期限を公的な情報で確認して対応しましょう。
従業員への対応を決める
従業員による持ち出しが確認されても、事実が判明した段階で直ちに懲戒解雇などを決めるのは避けるべきです。
まず、どのような行為が行われたのか、本人の説明とアクセスログなどの客観的な記録に食い違いがないかを整理します。
懲戒処分を行うには就業規則などの根拠が必要であり、行為の性質や事情に対して処分が重すぎる場合は、懲戒が無効となる可能性があります。
情報の種類や持ち出した目的、外部提供の有無、会社に生じた被害などを確認し、社内規定に照らして対応を検討しましょう。
重い処分を予定している場合ほど、判断を急がず、本人の言い分を確認したうえで労務に詳しい弁護士などへ相談することが重要です。
法的措置を検討する
会社に大きな損害が生じた場合や、機密情報が競合他社などへ渡った場合は、民事・刑事の両面から対応を検討することがあります。
特に、不正競争防止法上の「営業秘密」に該当する情報が不正に持ち出された場合は、要件を満たせば民事上または刑事上の措置を取れる可能性があります。
ただし、社内で機密扱いしている情報がすべて法律上の営業秘密になるわけではなく、秘密として適切に管理されていたかなども重要な判断要素です。
持ち出された情報の内容や管理方法、取得・送信の記録、損害の状況を整理し、利用できる法的手段を検討します。
証拠を確保する前に本人へ強く追及すると記録が失われるおそれもあるため、重大な事案では対応の順序について専門家の助言を受けると安心です。
専門家への相談を検討する
漏洩経路や被害範囲を自社だけで特定できない場合は、早い段階で外部の専門家を交えることも選択肢になります。
パソコンやサーバーの調査が必要ならデジタルフォレンジックの専門家、懲戒や損害賠償などを検討する場合は弁護士というように、目的に応じて相談先を選びます。
個人情報が含まれていれば報告や本人通知の判断も必要になるため、調査だけでなく法務面を並行して確認することが大切です。
相談時には、発覚した日時、対象となる情報、関係者、保存しているログ、これまで実施した対応をまとめておくと状況を共有しやすくなります。
社内だけで結論を急がず、技術・法務・労務の観点を必要に応じて組み合わせることで、証拠を守りながら適切な対応につなげやすくなります。
内部情報漏洩の再発防止策
アクセス権限を見直す
重要な情報は、業務上必要な従業員だけが利用できる状態にしておくことが基本です。
部署異動や担当変更の後も以前の権限が残っていると、本来扱う必要のない顧客情報や機密資料へアクセスできる状態が続いてしまいます。
IPAも、情報の機密性に応じてアクセス権限を設定し、付与状況を定期的に見直すことを内部不正対策として示しています。
人事異動や組織変更のタイミングだけに任せず、定期的にアカウントと権限を棚卸しし、不要になったものは速やかに削除しましょう。
誰がどの情報を利用できるのかを把握できる状態にしておけば、不必要なアクセスを減らすだけでなく、異常な操作にも気づきやすくなります。
データ持ち出しを制限する
社外へ情報を持ち出せる経路を把握し、業務上必要な範囲に絞ることも欠かせません。
USBメモリや外付け記録媒体、個人用クラウドサービスなどが自由に利用できる環境では、故意だけでなく操作ミスによる情報流出も起こりやすくなります。
IPAの実態調査では、内部から情報を持ち出す手段としてUSBメモリの利用が多く、外部記録媒体の利用ルールや制限が対策として挙げられています。
すべてを一律に禁止するのではなく、業務で必要な場合の申請方法や利用できる媒体、保存可能な情報を明確にすると運用しやすくなります。
ルールを作るだけで終わらせず、従業員への周知と技術的な制御を組み合わせ、抜け道が生じにくい環境を整えることが大切です。
不審な操作を早期に把握する
情報が外部へ渡ってから気づくのではなく、通常と異なる操作を早い段階で発見できる仕組みを整えます。
アクセスログやファイルのダウンロード記録などを保存し、深夜の大量取得や重要情報への集中したアクセスといった変化を確認できる状態にしておきましょう。
IPAはログの記録・確認に加え、ふるまい検知などの技術を活用する場合にも、人による判断を組み合わせることの重要性を示しています。
システムが異常を検知したからといって直ちに不正と判断せず、担当業務や勤務状況と照らし合わせて確認することが必要です。
また、従業員のモニタリングを行う場合は、その目的や運用方法を明確にし、プライバシーにも配慮した体制を整えましょう。
退職時の情報管理を強化する
退職者が出る際は、アカウントやアクセス権限、貸与端末、保有している業務データをまとめて確認します。
退職日まで従来と同じ権限を残したままにせず、引き継ぎに必要な業務を考慮しながら、不要となった権限から段階的に見直すことが重要です。
IPAのガイドラインでも、雇用終了時には情報資産の返却やアカウントの削除などを適切に行い、退職前後の情報管理を徹底する考え方が示されています。
会社から貸与したパソコンやUSBメモリなどの返却確認に加え、業務データを個人の端末やクラウドサービスへ残していないかも、社内ルールに沿って確認しましょう。
退職時の対応を担当者任せにせず、確認項目と実施時期をあらかじめ決めておくことで、漏れのない運用につなげやすくなります。
まとめ
内部情報の漏洩が疑われると、会社への影響を考えて焦ってしまいがちですが、まず大切なのは、確認できる事実を一つずつ整理することです。
不自然なアクセスやデータの持ち出しが見つかっても、記録を残しながら調べていけば、何が起きているのかを落ち着いて判断しやすくなります。
もし漏洩が分かった場合も、被害の範囲を確かめ、必要な報告や社内対応を順番に進めることで、影響を広げないための行動につなげられます。
今回の対応をきっかけに、アクセス権限や持ち出しルール、退職時の管理まで見直せば、同じ問題を防ぐための体制づくりにもつながるでしょう。
すべてを社内だけで解決しようとせず、判断に迷う部分は専門家の力も借りながら、できるところから着実に対応を進めていくことが大切です。
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